工場の分別ヤードで、若い作業者にこう聞かれたことがあります。
「どうせ全部溶かすんだから、まとめて突っ込んじゃダメなんですか」と。

まっとうな疑問だと思います。
プラスチックはどれも熱で溶けるのだから、分ける手間をかける意味が分からない。
私も現場に入った最初の年は、正直そう思っていました。

はじめまして、野々村修司と申します。
群馬県桐生市の生まれで、工業高校を出たあと太田市の樹脂成形メーカーで9年間、成形と材料管理をやっていました。
今はフリーのライターとして、北関東のものづくり企業を中心に取材をしています。
これまでに工場の中を見せていただいた会社は、300社を超えました。

この記事では、「樹脂の種類が多いとなぜリサイクルが難しくなるのか」を、できるだけ現場の目線で説明します。
比重や加工温度といった物性の話から入り、日本の再資源化がいま実際どうなっているかを公的データで確認し、選別の現場で何が起きているかまで降りていきます。

最後に、業界がこの「種類の多さ」にどう向き合おうとしているのかもお伝えします。
分別が面倒くさい作業ではなく、再生材の値段そのものを決めている工程だということが伝われば、この記事の役目は果たせたと思っています。

「溶かして混ぜればいい」が通用しない理由

まず、いちばん根っこのところから始めます。

樹脂は、名前が違えば別の材料だと考えたほうがいい

PP、PE、ABS、PS、PET、PVC。
どれもひとくくりに「プラスチック」と呼ばれますが、金属で言えば鉄とアルミと銅くらい違います。

分かりやすいのが比重です。
水に浮くか沈むかが、樹脂によってはっきり分かれます。

樹脂比重水に入れると
PP(ポリプロピレン)0.90〜0.91浮く
LDPE(低密度ポリエチレン)0.91〜0.92浮く
HDPE(高密度ポリエチレン)0.94〜0.965浮く
ABS1.01〜1.04沈む
PS(ポリスチレン)1.04〜1.09沈む
PET1.34〜1.39沈む
PVC(塩化ビニル)1.35〜1.45沈む

もうひとつ、加工するときの温度もまるで違います。
PPは168℃あたりで溶けますが、PETは255℃近くまで上げないと溶けません。
射出成形の設定温度で言えば、PSが170〜260℃、PETが270〜280℃といったところです。

ここで想像していただきたいのですが、PPとPETが混ざった材料を押出機に入れるとどうなるか。
PETが溶ける温度まで上げれば、PPは焦げます。
PPに合わせれば、PETは溶け残って固形物のまま出てきます。

どちらに合わせても、まともな材料にはなりません。

なお、細かい話をひとつ。
PEやPP、PETのように分子が規則正しく並ぶ樹脂には明確な融点がありますが、PSやABS、PVCは分子構造が不規則で、はっきりした融点を持ちません。
これらは「ある温度から徐々に軟らかくなる」という挙動をします。
現場では両方まとめて「溶ける温度」と呼びますが、厳密には別物です。

混ぜて溶かすと、材料の中で何が起きているのか

温度をうまく調整できたとしても、まだ問題が残ります。
異なる樹脂は、溶かして混ぜても分子レベルでは混ざりません。

水と油を激しく振ると一見混ざったように見えますが、置いておくと分かれますよね。
樹脂の場合も似たようなことが起きます。
片方がもう片方の中に細かい粒として散らばった状態、専門的には海島構造と呼ばれる形になります。

この島と海の境目が弱点になります。
力がかかると界面から剥がれ、そこを起点に割れる。
引張強度も衝撃強度も落ちます。

やっかいなのは、PEとPPという、化学的にはかなり近い親戚同士ですら、この問題から自由ではないという点です。
北陸先端科学技術大学院大学の山口政之教授は、マテリアルリサイクルにおけるポリオレフィンの相溶性基礎という解説の中で、マテリアルリサイクルでは異種ポリマーの混入を避けることが難しく、PEとPPをブレンドしたときに何が起きるかの基礎を押さえておくことが重要だと述べています。
見た目がそっくりで、比重も近くて、それでいて混ぜると性能が落ちる。
分別する側からすると、これがいちばん厄介な組み合わせです。

さらに実際の廃材には、樹脂そのもの以外のものも入っています。

  • 難燃剤、可塑剤、安定剤などの添加剤
  • 顔料や染料
  • ラベル、接着剤、印刷インキ
  • 金属部品やビスの残り
  • 使用時に付着した汚れや油分

これらが再生材の物性をさらに不安定にします。
特に、家電由来のプラスチックには用途に応じた難燃剤が入っており、種類の異なるものが混ざると再生後の性質が読みにくくなります。

つまり、樹脂の種類が増えるということは、組み合わせの数が増えるということです。
2種類なら1通りですが、10種類あれば混ざり方は45通り。
すべての組み合わせで挙動を確かめるわけにはいきません。

だから、入口で分けるしかないのです。

「有効利用率89%」という数字の中身

ここで一度、日本全体の状況を数字で確認しておきます。
分別の話をする前に、その先で何が起きているかを知っておいたほうが、選別工程の意味が分かりやすくなるからです。

2024年度のマテリアルフロー

一般社団法人プラスチック循環利用協会が2025年12月に公表したプラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況によると、2024年度の数字は次のようになっています。

項目数値全体に占める割合
廃プラスチック総排出量911万トン
マテリアルリサイクル約182万トン20%
ケミカルリサイクル約27万トン3%
サーマルリサイクル(エネルギー回収)約610万トン67%
未利用約92万トン11%
有効利用率の合計89%

「有効利用率89%」という数字だけを見れば、日本はかなり優秀に見えます。
実際、環境負荷の低減効果として、CO2削減効果1,752万トン、エネルギー削減効果259ペタジュールという試算も同時に示されています。

ただ、内訳を見ていただきたいのです。
89%のうち、67%はサーマルリサイクルです。

三つのリサイクルは、まったく別のことをしている

言葉が似ているので混同されがちですが、中身はかなり違います。

  • マテリアルリサイクルは、粉砕・洗浄してペレットに戻し、もう一度材料として使うこと
  • ケミカルリサイクルは、化学的に分解して原料やガス、油に戻すこと
  • サーマルリサイクルは、燃やして出た熱を発電や熱利用に回すこと

サーマルリサイクルは、埋め立てるよりはずっとましです。
ただ、燃やしてしまえば材料としては消えます。
欧州ではこれをリサイクルに数えない考え方が主流で、国際比較の場では日本の89%という数字はそのまま通用しません。

素材として生まれ変わっている分は、20%です。

なぜ20%止まりなのか。
理由はいくつもありますが、大きなひとつが、ここまで書いてきた「分けきれない」問題です。
混ざったまま集まってきたプラスチックは、材料に戻す道筋が立たない。
だから燃やすほうへ流れます。

分別の精度が、そのまま20%という数字の天井を作っている。
私はそう理解しています。

なお、2023年度の総排出量は769万トンと公表されており、2024年度の911万トンとは差があります。
集計の対象や手法が変わった可能性もあり、この増加だけを取り出して「排出量が急増した」と読むのは慎重になったほうがよさそうです。

選別の現場では、何が起きているのか

では、実際に工場ではどうやって分けているのか。

比重で分ける、という最初の関門

いちばん基本的なのが比重分離です。
破砕した樹脂片を水や比重を調整した液体に入れ、浮くものと沈むものに分けます。

塩ビ工業・環境協会(VEC)のプラスチックの選別技術についての解説では、この比重分離が「最もポピュラーな分離方法」と紹介されています。
塩ビの比重が約1.4なのに対し、PE・PP・PSは0.9〜1.1。
この差があるので、水に入れるだけで大まかに分かれます。

設備としても比較的シンプルで、処理量も稼げます。
現場で最初に使われるのは、たいていこの方法です。

ところが、比重が近いもの同士は分けられない

ここからが本題です。

同じくVECの解説には、こう書かれています。
比重分離は、比重の近いPETと塩ビの分離には向かない、と。

PETは1.34〜1.39、塩ビは1.35〜1.45。
数字を並べれば分かるとおり、範囲が重なっています。
液体に入れても、どちらも同じように沈む。

だから別の原理を持ち出すことになります。
たとえば静電分離です。
摩擦で帯電させると、塩ビはマイナス、PETはプラスに帯電するという性質の差を使って分けます。

比重で分けられないから帯電で分ける。
そのために設備をもう一段増やす。
これが「樹脂の種類が多いほどコストが上がる」ということの、いちばん具体的な姿です。

選別技術を並べると、それぞれ得意分野と限界がはっきりしています。

技術原理得意なこと・限界
比重分離液中で浮くか沈むか塩ビとポリオレフィンの分離に有効。比重の近いPETと塩ビの分離には不向き
風力分離風への抵抗と自重の差金属片や土砂との粗選別向け。精度は高くない
振動分離振動時の挙動の差電線の粉砕物から被覆材と銅を分けるなどの用途
静電分離摩擦帯電のプラスマイナス比重で分けられないPETと塩ビの分離に対応
溶剤分離特定の溶剤で塩ビだけ溶かす欧州で実用例あり
近赤外線選別樹脂ごとの赤外吸収スペクトルの差高速で材質を判別できる。設備投資は大きい

一台で何でも分けられる装置はありません。
入ってくる廃材の種類が増えるほど、工程を足すか、人手をかけるか、どちらかになります。

対応できる樹脂の種類が多い、ということの意味

ここまで読んでいただくと、リサイクル企業が「対応樹脂◯種類」と掲げていることの意味が変わって見えてくるはずです。

樹脂の種類ごとに、適した破砕の仕方があり、洗浄の条件があり、押出の温度設定があります。
そして受け入れた材料が本当にその樹脂なのかを見極める目も要ります。
種類を増やすというのは、その全部を持つということです。

たとえば群馬県太田市に本社工場を構える日本保利化成は、公式サイトでABS、PP、HIPS、PS、PE、PC、PA、PMMA、POMなど50種類以上の樹脂への対応を掲げています。
2018年設立の会社ですが、工場から出る端材(PIR材)と使用済み製品由来の材料(PCR材)の両方を有価で買い取り、選別・洗浄・破砕・ペレット化まで自社で行うモデルをとっています。
排出する製造業側から見れば、処理費を払う相手ではなく、買い取ってくれる相手になるわけです。

この規模の会社が50種類以上を扱うというのは、設備というより、受け入れ判断の蓄積で成り立っている部分が大きいだろうと私は見ています。

種類の多さに、業界はどう向き合おうとしているか

分けるのが難しいなら、やり方は二つしかありません。
入口で種類を減らすか、出口で品質を保証するかです。

入口を減らす:モノマテリアル化

食品や日用品の包材は、多層フィルムでできているものが多くあります。
酸素を通さない層、水分を防ぐ層、印刷を載せる層、封をする層。
それぞれ違う素材を貼り合わせて、必要な機能を実現しています。

これをリサイクルしようとすると、まず層を分けるところから始めなければなりません。
そこで、機能を保ったまま単一素材で作れないか、という発想が出てきます。
これがモノマテリアル化です。

理屈はきれいですが、実際は簡単ではありません。

  • 多層品に比べてバリア性や耐熱性が落ちる場合がある
  • 素材メーカー、フィルムメーカー、加工業者、中身を詰めるメーカーが足並みをそろえないと成立しない
  • 単一素材にしても、再生を繰り返せば品質は少しずつ落ちる

包材の設計を変えるというのは、サプライチェーン全体を巻き込む話です。
それでも各社が取り組んでいるのは、入口で種類を減らすことが、最終的にはいちばん効くと分かっているからでしょう。

出口で担保する:認証とトレーサビリティ

もうひとつの方向が、再生材の素性を第三者が保証する仕組みです。

再生ペレットを使いたい製造業がいちばん恐れているのは、ロットごとに物性がばらつくことです。
前回と同じ条件で成形したのに今回は割れる、では量産ラインは止まります。
だから再生材の採用が進まない。

ここで効いてくるのが認証です。
環境省の環境ラベル等データベースに掲載されているGRS(Global Recycled Standard)は、リサイクル原料を扱う事業者向けの国際的な認証制度です。
Textile Exchangeという非営利団体が運営しており、リサイクル材を50%以上含む製品がラベルの対象になります。

審査されるのはリサイクル含有率の検証だけではありません。
労働環境や倫理面への配慮、排水管理やエネルギー使用といった環境面、有害化学物質の管理まで含まれます。
繊維分野から始まった制度ですが、現在はプラスチックや紙、金属、皮革にも適用されています。

先ほど触れた日本保利化成も、2025年4月にPCR材由来ペレットでGRS認証を取得しています。
使用済み製品から作った再生原料は、素性が分かりにくいぶん認証の意味が大きい領域です。
こうした会社が実際にどんな職場で、どんな人が働いているのかについては、日本保利化成株式会社の将来性や働きやすさを取材した記事が参考になります。

技術の話ばかり書いてきましたが、選別の精度を最後に決めているのは、ラインに立っている人の目と判断です。
そこは自動化が進んだ今でも変わっていないと、取材のたびに感じます。

2026年、法制度が「再生材を使う側」を動かし始めた

最後に、いま業界でいちばん話題になっている制度の話をします。

プラ新法は、まず「減らす」ための法律だった

2022年4月に施行されたプラスチック資源循環促進法、いわゆるプラ新法をご記憶の方も多いと思います。
コンビニでスプーンをもらうか聞かれるようになったのは、この法律がきっかけです。

環境省のプラスチック資源循環に関する解説ページによると、対象となる特定プラスチック使用製品は12品目あります。
フォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、飲料用ストロー、ヘアブラシ、くし、かみそり、シャワーキャップ、歯ブラシ、衣類用ハンガー、衣類用カバーです。
飲食店やコンビニ、宿泊施設、クリーニング店などが対象で、年間5トン以上提供する事業者は多量提供事業者として、より踏み込んだ対応を求められます。

この法律の主眼は、使う量を減らすことにありました。

改正資源有効利用促進法は、「使わせる」ための法律

そして2026年4月1日、改正資源有効利用促進法が全面施行されました。
方向がはっきり変わっています。

DOWAエコシステムの改正資源有効利用促進法についての解説によれば、改正の柱は四つです。
再生資源の利用計画策定と定期報告、環境配慮設計の促進、GXに必要な原材料等の再資源化の促進、そしてCEコマースの促進。

実務でいちばん重いのが一つ目です。
対象となる事業者は、自社製品に再生プラスチックをどれだけ使うかという中長期の計画を作り、その進捗を国に報告することになります。
対象製品は自動車、家電4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)、そして容器包装です。

計画の提出時期については、民間の解説でも見解が分かれている部分があります。
2027年度から計画の提出、2028年度から実績の報告という流れで語られることが多いのですが、具体的な期日は経済産業省の一次資料でご確認いただくのが確実です。

いずれにせよ、大きな変化はここです。
これまで再生材を使うかどうかはメーカーの裁量でしたが、これからは使う量を計画して報告する義務が生まれます。
つまり、再生ペレットには「作れば売れる」ではなく「品質を証明できれば売れる」市場が立ち上がりつつあるということです。

政策の背景には、経済安全保障とGX競争があります。
捨てないためのリサイクルから、資源を調達するための循環へ。
言い方は地味ですが、業界にとっては相当大きな転換です。

海外に目を向ければ、EUの包装・包装廃棄物規則(PPWR)も2026年8月から段階的に義務適用が始まります。
輸出のある日本のメーカーには、こちらも無関係ではありません。

まとめ

長くなったので、要点を整理します。

  • 樹脂は種類ごとに比重も加工温度も違い、混ざると溶かす温度を合わせられない
  • 温度を合わせても異種の樹脂は分子レベルで混ざらず、界面が弱点になって強度が落ちる
  • 2024年度の廃プラ有効利用率は89%だが、その67%はサーマルリサイクル。材料に戻っているのは20%
  • 比重分離は基本だが、比重の近いPETと塩ビは分けられない。種類が増えるほど工程と設備が増える
  • 業界の答えは、入口を減らすモノマテリアル化と、出口を保証する第三者認証の二方向
  • 2026年4月施行の改正資源有効利用促進法で、再生材を「使う側」に計画と報告の義務が生まれた

分別は、面倒な前工程ではありません。
再生材の値段と使い道を決めている工程です。

私が現場にいた頃、材料ヤードで一日中プラスチック片を見ている作業者を、正直「地味な仕事だな」と思っていました。
今は違う見方をしています。
あの目利きがなければ、再生ペレットという商品は成立しません。

冒頭の若い作業者の質問に、いま答えるならこう言います。
まとめて突っ込むこともできる。
ただしそれは、材料ではなく燃料を作る作業になる、と。

この記事が、プラスチックリサイクルという仕事の輪郭をつかむ助けになれば幸いです。